手作りビールの衛生管理

おいしい手作りビールを作るためにもっとも重要なことは「清潔さを保つこと」です。ビールに好ましくないワイルドイースト(野生酵母)やバクテリアの混入を防ぐことがおいしい手作りの鍵になります。これらの微生物に汚染されると、ビールが濁ったり酸っぱくなったり、異常発酵して炭酸が強くなりすぎたり、表面にカビが生えたり、オフフレーバーがついたりと、様々な事態が起こります。

手作りビールの衛生さを保つことはそんなに難しいことではありません。好ましくない微生物を除外するには

  • 洗浄
  • 殺菌消毒

をしっかりとすれば良いのです。

「洗浄」とは、ビールを作るために使用する器具や道具をキレイに洗うということです。「殺菌消毒」は器具や道具を消毒することです。「殺菌消毒」といっても菌やバクテリアを100%取り除くことはできません。ただし、ある程度まで除去することができれば、あとはイーストが勝手に繁殖し、他の菌が繁殖する余地はなくなります。「洗浄」は難しいことではありません。また「消毒」も、道具を消毒液に浸すだけです。手作りビールに利用可能な洗剤と消毒剤について説明していきます。

洗剤

家庭用アンモニア

家庭用アンモニアを溶いた水にビール瓶を浸けておくと、瓶のラベルがきれいにはがせます。アンモニアは臭いがきついので、風通しの良い所で作業しましょう。

塩素

塩素系洗剤、つまりキッチン用ブリーチのことです。塩素は強力な洗剤であり、消毒殺菌剤でもあります。クロリン(塩素)とクロライド(塩素イオン)は化学的に別物です。クロライドは塩を水に溶いたときにナトリウムと分離してできる物質です。

家庭用のブリーチが一番手に入りやすく、しかも効果的です。たいていのキッチンブリーチにはクロリンが5%ほど含まれています。クロリンはどんな働きをするのでしょうか?クロリンは次亜塩素酸ナトリウムとして、台所用のキッチンブリーチに含まれています。水と融合したときに初めて次亜塩素酸ナトリウムとなり消毒剤としての効果を発揮します(初めから水に溶かしてあるものも売られています)。次亜塩素酸ナトリウムはきわめて不安定な物質で、簡単に他の化学物質に変化して消毒剤としての効力を失いだけでなく、水に不快な物質を加えます。この物質は日光や熱によって分解されやすい性質を持っています。またタンパク質やイーストの養分としてウォート中に含まれている窒素化合物などとも結合して化学変化を起こし消滅に至ります。ただしクロリンと窒素化合物との組み合わせには問題があります。それはクロロフェノールやクロロホルム、クロロメネスなどといった安定物質に変化してビールのオフフレーバーとなり、しかも多量になれば人体に有毒なためです。

クロリンを含んだキッチンブリーチには消毒剤としてだけでなくひょうはくざいとしての効果もあり、落ちにくい汚れや手の届かない部分の汚れを取り除くのに使われています。よってビールの瓶や発酵容器の汚れカスなどを取り除くのに最適です。19リットルの水に56gのブリーチを溶かしこんで一晩浸しておけば、発酵容器などの汚れも簡単に落とせます。浸したあとはお湯を使ってよくすすぎましょう。ホームブルーイングに使うときには、19リットルの水に小さじで1/3〜1.5杯を溶かしこんで使います。消毒したあとは水ですすぎましょう。

洗剤

容器や道具にこびりついた油汚れは、洗剤を使ってよく洗い落としましょう。洗剤は無臭タイプがよいです。すすぎもしっかりしましょう。少しでもカスが残っているとビールの味が損なわれます。

お湯や熱によっても器具を消毒できます。その場合には71℃以上の温度にする必要があります。

ヨウ素

あまり一般的ではありませんが、乳製品を扱う業者などで使われているヨウ素系の消毒液も使えます。製品としてはヨウ素系殺菌剤として売られていますが、リン酸などの有毒な薬品を含んでいることが多いので、使用時はよく説明書を読んでください。

石鹸

石鹸を使用することもできます。すすぎはお湯でよく行いましょう。

プラスチック製の容器や道具の洗浄・消毒

サイフォンのホースや発酵容器などのプラスチック製品を洗浄・消毒する場合には、表面にキズをつけないように気をつけましょう。タワシやブラシを使わないようにします。裏面が硬いキッチン用スポンジも使ってはいけません。これらは容器の表面に小さなキズをつけてしまうためです。このキズにはバクテリアが住み着きやすく、どんなに強力な消毒剤をつかっても取り除くことはできません。表面に傷がついたり古くなった場合は、その容器を捨てて新しいものを使うようにしましょう。

プラスチック製品の洗浄・消毒には、これまであげたどの薬品を利用しても構いません。ただし、ソフトプラスチックは熱に弱いので、煮沸するのはやめましょう。

ガラス製カーボイや瓶の洗浄・消毒

ガラス製の器具も他のものと同様きれいに洗浄して使わなければなりません。ただ、洗浄は厄介です。柄の長いブラシを使わなければなりません。ブラシを使って瓶の底や側面、首のくびれあたりを念入りにこすって汚れを洗い落とします。洗った後は汚れが残っていないかしっかりと確認してください。一番良いのは、使い終わった直後に洗浄することです。そうすれば水で洗い流すだけで十分に汚れが落とせます。瓶やカーボイに水やお湯を入れてよく振り、流すことを3回ほどおこなえばきれいになります。

ビール瓶の汚れには特に注意が必要です。光のよく射す場所でしっかりと内側を確認してください。少しでも汚れがこびりついていたらい、その汚れがバクテリアの格好のすみかになってしまいます。どうしても汚れが落とせないときや見た目にわからないときには、ブリーチに浸して時間を置いてみると良いです。表面と内側を消毒し、その後お湯を使ってよくすすぎましょう。

その他の道具の洗浄・消毒

ボトルキャップ(王冠)の消毒は、そのまま煮沸するのが簡単で手っ取り早い方法です。

ウォートを混ぜるときに木製のスプーンを使うことはできません。木製品は消毒できないためです。正確には71℃を超えるウォートを混ぜる場合、スプーンに付いた菌が熱で死滅するので問題ありませんが、71℃以下のウォートは混ぜないようにしてください。

なお、最後に覚えておいてほしいのは、バクテリアや部生物がビールに混入するのを100%防ぐことはできません。ある程度のことをやれば十分に満足のいくビールが作れるはずです。

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